株式投資を始めていくと、まず始めに問題となっていくのが投資資金の余力です。現物のみで取引をしていると「信用取引なんて怖い!」「そこまでリスクを取らなくてもいいのでは?」といった保守的な意見をよく聞きます。
でもそれって本当にそうなんでしょうか?
一度悪い印象を持ってしまうと、なかなかそのイメージが残ってしまうため良い部分を知らないまま損をしているケースもあります。
信用取引の良い部分を利用しないまま現物株だけで取引していてると、実は気が付かないうちに損をしているかもしれません。今回の記事では、信用取引で誤解されがちなデメリットや知られていないメリットについて解説していきます。
場面に応じた適切な使い方も紹介していきますので、よくわからないままだったシステムの理解と不安を取り除いていきましょう!
目次
信用取引とは
カンタンに言ってしまうと、”借金をして取引をする”ことです。
借金してまでやりたくないよ、、という声が聞こえてきそうですが、デメリットだけではありません。まずはどういったシステムなのか確認しましょう。
信用取引とは、保証金(現金または上場株式等)を証券会社に預けることで、最大保証金の約3.3倍までの金額の取引をすることができます。これをレバレッジと言います。取引をするためには証拠金(信用口座の資金)を最低30万円預けることが定められているため、30万円未満の場合は信用取引を利用することができません。
また、口座資金が最低保証金ギリギリの金額で取引ができたとしても、保有株の評価額が下がって最低保証金を下回った場合は次回の取引ができなくなってしまうので注意です。そうならないためにも、余裕をもって利用するために最低50万円は資金をを用意しておきましょう。
怖いと思われているワケ
借金をして取引すること自体に抵抗(恐怖)があるという方も当然いるでしょう。しかし、借金をして夢を叶えたり、豊かな生活をしている人は多く存在しています。株も同じように資産を増やし、明るい将来を手に入れるための必要手段です。
では、なぜ世間から怖いというイメージを持たれているのでしょうか?
その原因にあげられるのが、リスクを過剰に取ってしまう可能性があるということです。これは投資資金以上にレバレッジをかけたときの変動幅が大きくなってしまうため、思っていた方向とは逆の動きをした際に元本が割れてしまうケースがあります。
どのようなときに起きるかというと、過剰なレバレッジをかけて取引したときです。余力の範囲内であれば損失額は投資資金以上になることはありませんが、大きくレバレッジをかけたときに負債を抱えてしまうケースが発生します。
自己資金100万円で現物取引したときと、信用取引でレバレッジを3.3倍で取引した場合と比較をしてみましょう。
運用条件 | 株価が50%下落した際の損失額 | 資産残 | 負債残 |
【現物取引】 自己資金100万円のみ運用 |
100万円×50%=損失50万円 | 50万円 | 0円 |
【信用取引】 自己資金100万円を 証拠金として330万円を運用 |
330万円×50%=損失165万円 | 0円 | 65万円 |
現物取引では株価が50%下落したとき、損失は50万円となり負債額はありません。しかし、信用取引の場合だと損失が165万円となり自己資金以上の損失額となってしまうため、65万円の負債が残ってしまいます。
つまり、レバレッジが原因で元本割れの状況になってしまい、やられた、だけで済まされず、追加で入金しなくてはならないのです。
追加入金の可能性
追加証拠金の発生、通称「追証」といいます。
余力を目一杯使った信用取引は別名、信用全力とやフルレバと呼ばれており一発逆転もありますが、ハイリスク・ハイリターンになってしまうため禁断の手法となります。
追証になる条件は各証券会社によってタイミングが違いますが、楽天証券では翌々営業日の12:00(正午)までに入金、もしくは建玉(保有株)の決済による追証の解消が必要となります。「最低保証金率」は20%になっており、建玉決済による追証に関しては、建玉の20%を追証の返済に充てられます。
ただし、これは信用取引で評価額が極端に下がったときに発生する最悪の事例ですので、現物取引の範囲なら損失は自己資金の範囲内に収まります。あくまでもレバレッジを大きくかけたときに起こることなので、節度のある取引をしていればこのようなことにはなりません。
逆に大きく儲けられるチャンスも当然ありますが、1回の取引ですべて資産を無くしてしまう恐れがあるためオススメできません。
空売りができる
信用取引では、現物取引ではできない空売り「信用売り」という取引があります。株を持っていない状態で証券会社(貸株機関)から株を借り、後で買い戻すことを条件として先に株を売ることを指します。
これは先に売却分を手にし、株価が下落したタイミングで買い戻すことによって利益を得る方法のことです。現物買いではチャンスのない下落局面でも利益を出すことができます。
しかし、「買いは家まで売りは命まで」という相場格言があるほどリスクが高いものと恐れられています。格言ができてしまうほど、どうしてそのように感じているのでしょうか?
空売りの損失は無限大
買いでエントリーした時の損失は、株価が0円になったときに投資した額が最大となりますが、空売りで入った場合の上げ幅の上限はないので無限に上昇する可能性があります。つまり損失も無限大です。
現実的に起こる可能性は限りなく少ないですが、決算を機にした業績の上方修正やTOB(株式公開買い付け)などがあった際は、大きく損失が膨らむこともあります。
信用取引のコスト
現物取引では買付け時と売付け時に取引手数料のみ発生しますが、信用取引ではその他にもコストが必要となってきます。
信用買い
証拠金や株を担保にして証券会社(貸株機関)からお金を借りるため、金利が発生します。これを買い方金利といいます。証券会社によって金利はさまざまですが、楽天証券では年利2.1%(優遇金利適用時)となっています。
信用売り
株を借りてから売ることになるため、貸株料が発生します。信用買いと同じく証拠金が必要となってきます。楽天証券では年利1.1%となっており、信用買いよりも低く設定されています。
逆日歩(ぎゃくひぶ)
信用売りで一番コストが掛かる可能性があるのが逆日歩です。逆日歩は、信用売残高が信用買残高を超えると発生することがあります。これは証券会社(貸株機関)は貸し出せる株がなくってしまった時に、機関投資家などの大株主などから株式を調達するため、その手数料分を上乗せされることで費用が新たに発生します。
実際に逆日歩がどのくらいかかるかというと、
1株あたりの逆日歩(円)× 信用売り株数 × 建玉の保有日数 = 逆日歩のコスト
逆日歩の金額は日々の信用売残高と信用買残高によって変化するので、ケースによっては費用が大きく膨らむことがあります。市場が開いていない時でも発生してしまうため、連休前に信用売りをするときは注意が必要です。
逆日歩が発生している銘柄は信用売りをするとコストとして徴収されますが、信用買いの場合はその分を利益となるため、日々の推移を見ることでチャンスが生まれることもあります。
信用買いと信用売りの残高は1日単位で変わるため、信用取引をするときは情勢が極端に変化したときでも対応できるよう、レバレッジに余裕を持つよう日々心がけてください。
取得単価計算
現物取引では総平均法に準ずる方法となっているため、同一銘柄で複数単元を保有すると取得単価が合算されます。
一方、信用取引では個別法が適用されるので、同じ条件で取引をした場合でも反対売買する際に買付け(売付け)した株価で計算されるため、より詳細な取引をすることが利点です。
適切な使い方
それはズバリ、レバレッジのコントロールです。
利益や損失はレバレッジに比例して変化します。自分がどこまで損失額を許容できるか想定していれば悲惨なことにはなりません。あらかじめ想定している損失内の株価変動では動揺も少なく信用取引を有効活用できるため、最初はレバレッジを掛けすぎないことに注意することが大切です。
また、小資金で始められる方は投資金額を越えない程度の低レバレッジで練習することで経験を積んでください。良い取引を生み出していきます。
過度の妄信や極端な思い込みなどで資産を失った人を幾度も見てきました。初心者の方は、最初のうちからレバレッジを大きくしないように気をつけてください。たった一度の失敗で、人生がめちゃくちゃになってしまいます。
まとめ
いかがでしたか?
信用取引では最大3.3倍の取引ができるので、小資金でも大きな取引ができることが一番の特徴です。その反面、使い方次第では損失も膨らむこともあるため諸刃の剣のように自分まで傷つけてしまうこともあります。
実質、借金をして取引することになりますが、短期間に限定した売買であれば現物取引に比べて総コストを抑えることができるため、場面に応じて使い分けることが大切です。徹底したリスク管理と場面によった使い分けで信用取引をうまく利用していきましょう。