利益が出るまでポジションを解消するつもりはない、最悪でもプラスマイナスゼロで終えたい、負けるのは絶対にイヤ!このような考えを持つことは、トレードをしている方であれば1度は感じたことがあるのではないでしょうか。
繰り返しトレードをしていれば、勝つときもあれば負けることも当然あるのが相場です。しかし、人間は欲深いもので目先の損失を受け入れられず、結論を先延ばしにしたがゆえ、さらに大きな損失になったときに耐えられることができずに損切をしてしまう方が大半です。
そのような辛く悲しい局面に立ち会わないため、自身がどれだけのリスクをとってトレードをしているのか理解する必要があります。今回の記事では、勝率や期待値からチャンスを逃さないためのマインドセットについて紹介していきます。
目次
期待値
確率の見地から算定した平均値を統計学の視点から数値化したものが期待値です。簡単にいいますと、確率を考慮した平均の値です。つまり、期待値が100%を超えるトレードを続けていけば、資産が増えていくことを示しています。
なんとなくトレードをしていても、一時的に資産が増えることは少なからず発生します。しかし、期待値が100%以下の行動であった場合、これを続けることで結果的に資産が減っていきます。
これを避けるためには、テクニカル、ファンダメンタルズ、需給分析など、さまざまな手法を用いて検証し、利益と損失をあらかじめ設定したトレードでなければなりません。
リスクリワードレシオ
勝ちトレードの平均利益額が、負けトレードの平均損失額の何倍かを表す指標です。別名ペイオフレシオとも呼ばれ、この数値をもとにエントリーのポイントとリスクリターンの割合を考えていきます。
大切な資産を守るためにリスクに焦点を合わせ、これから投じる金額が潜在利益に見合うかどうかを見定めていきます。計算方法は以下の通りです。
リスクリワードレシオ = 勝ちトレードの平均利益額 ÷ 負けトレードの平均損失額
1以上:勝ちトレードの利益額 > 負けトレードの損失額
1以下:負けトレードの損失額 > 勝ちトレードの利益額
【例】損益率が「3」の場合
・勝ちトレードの平均利益の額300万
・負けトレードの平均損失の額100万
リスクリワードレシオが1以下になるトレードでは資産が減ってしまうため、1以上になるようなトレードをしなくてはなりません。また、1以上でも売買手数料や税金を加味した場合、マイナスになるケースがあるので、目安として2以上になるようなディーリングを検討しましょう。
勝率重視のトレードは意味をなさない
勝った回数から勝負した回数を割ったものに100を掛けたものが勝率ですが、分母(試行回数)が多ければ多いほど、結果の確実性が高まっていきます。1回の損益率が一定でない場合、将来の資産増減を予測することはできません。
ポジションの含み益が出るとわずかな値幅で利益を確定したり、含み損になったらしばらく塩漬けにして、買値まで我慢するといったトレードであれば勝率を上げることもできますが、こんなことを続けていては確実に資産は目減りしていくでしょう。
こういった悲惨な目に合わないため、極めてシンプルなポイントを理解しておく必要があります。
損失 < 利益
「なに当たり前のこと言っているんだ!」と聞こえてきそうですが、このシンプルな理屈を実行できていないからこそ、9割以上の投資家が資産を失っているのです。
これは、日常生活や全ての事象に対して「損をしたくない」という誰もが持っている心理に陥ることが主な原因です。投資においても同様、含み損を我慢しがちですが、この心理状況を克服しないことには前へ進めません。
過度な固執は機会損失を招く
「この銘柄で絶対負けたくない!」という心理状態になるのは人間として自然なことですが、「せめて自分の買値までは持っておこう」といった考えは、いますぐ捨ててください。
自分がエントリーした時点の株価は、他の投資家にとってまったく意味をなしません。勝率を上げようとするあまり保有期間が長期化することで余力が拘束され、次のチャンスに乗れない可能性が高くなってしまいます。
極端な話、勝率20%でも結果的に手元の資金が増えていれば問題ありません。当初の見立てと違う方向に株価が進んでしまった場合は、潔くポジションをリセットして他の銘柄に乗り換えましょう。
買付け余力は余裕のバロメーター
余力の大半を使って複数の銘柄で勝負していれば、大きな利益を手にすることができる反面、資金効率が落ちてしまいます。こういった状況でチャンスがやってきても、買付余力がなければ指をくわえて見ているしかありません。
ポジポジ病(ポジションを常に取ってしまう行動)の自覚がある方は、特に注意が必要です。もしものため、運用資金全体の30%程度は保管しておき、チャンスがやってきたときにすぐ動けるよう、普段から余力と気持ちに余裕を持って取り組める準備をしておきましょう。
リスク分散
どんな投資でも少なからずリスクは必ず発生しますが、そのリスクをどれくらい許容するかによってリターンの大きさが変化していきます。安い値段で買い、高い値段で売ることで利益を得られますが、あらゆる分析をしたとしても、将来の株価を確実に読むことはできません。
また、いくら実質価値の高い企業であっても、相場全体が軟調であれば、少なからず影響は受けてしまいます。大きな下落が来た時に気持ちが落ち込まないよう、分散投資という観点からリターンを相対的に安定させる努力が必要です。
エントリーしたものの、振り返ってみれば高値掴みだった、なんてことはよくあることです。そこで、投資のタイミングを分散し、高値のときにだけ買ってしまわないよう、3つの方法をご紹介します。
時間
当日中にエントリーをしようとしても株価は常に変化しているため、ベストなタイミングがいつなのかはわかりません。そのため、あらかじめ決めておいた時間に、一定の株数でポジションを取ることで高値掴みなどのリスクを軽減することができます。
期間
例年、アノマリーが発生しやすいとされる時期であっても、その時々によって相場の良し悪しが分かれます。また、当日の国内市場が好調のまま大引けを迎え、翌日に期待が持てる展開となった場合でも、海外のマーケットが崩れていれば少なからず翌日に影響を及ぼします。
そういったイレギュラーに直撃した時の被害を軽減するため、あらかじめ一定の期間を設けてポジションを取っていきます。
投資金額
時間や期間でリスクを分散したとしても、相場の方向性が下を向いているときには損失が発生します。一度に大きく投資する場合に比べて軽くなるとはいえ、含み損の増えるスピードが早ければ狼狽してしまうでしょう。
そういった緊急時でも一定の資金をコンスタントに投資していくのが投資金額の分散です。最安値で仕込みたいのは皆一緒ですが、ピンポイントでエントリーするといった神業は現実的ではありません。
ここまで分散について解説しましたが、すべてにおいて万能ではありません。投資対象の選択を入念に行うことや、複数銘柄に分けることも合わせてエントリー前に検討しておきましょう。
まとめ
損失を出している銘柄で取り返そうとするあまり、右肩下がりの銘柄を保有し続けているのは、自ら勝つチャンスを放棄しているようなものです。このような勝率重視のトレードは、時として資金拘束や機会損失の原因を作ってしまいます。
元本が無くなってしまっては、増やすチャンスも限られますし、場合によっては相場に携わることもできなくなります。悲惨な目に合う前にあらゆるリスクについて把握しておかなくてはなりません。
効率的に資金運用していくため、1つの銘柄にこだわり過ぎないことや、弱含みの展開となった際に逆指値注文などを活用した機械的な損失を出す勇気が必要です。
また、自身の感情がコントロールできる程度のポジションサイズにすることで、良い成果に結びつくことがあります。あらかじめ損失と利益のバランスがどの程度なのかということも想定し、根拠を明確にしたトレードを意識して取り組んでいきましょう。