一定期間の平均価格を線でつなぎ、ジグザグした値動きのブレを慣らして価格トレンドの方向や強さを見るためのテクニカルチャートが移動平均線です。株式に限らず、FXや商品先物など、さまざまなチャートで使われている、テクニカル分析の中で最もポピュラーで基本的な分析手法です。
今回は、そのテクニカル分析の中でも使用頻度が多いとされる、移動平均線のシンプルな使い方について解説していきますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
移動平均線とは
移動平均線とは、ローソク足に絡むように描かれており、一定期間の価格の終値の平均値を繋ぎ合わせた折れ線グラフで、トレンド分析の代表格です。日本語では「移動平均線」と、少し堅苦しい言い方をしますが、海外では「Moving Average」通称MAとスマートに呼ばれています。
移動平均線といっても種類が複数存在し、加重移動平均線や指数平滑移動平均線など、計算方法によって違いがありますが、ここでは一般的によく使われている、単純移動平均線「Simple Moving Average」(SMA)について掘り下げていきます。
この単純移動平均線とは、計算の対象となる期間の複数の終値について平均値を算出し、期間をずらしながら線でつないで表示させたものです。
例えば、5日移動平均(5SMA)であれば、本日を含めた過去5日間の終値を合計し、日数の5で割って平均した数値を1日ごとに計算して線で繋ぐことによって形成されていきます。
また、移動平均線は、投資家の心理状態を表したものなので、しばしば重要な節目として意識されることが多く、テクニカル分析の中でも、もっともポピュラーな指標として使われているのです。
使い方
移動平均線を使った分析手法として、一番シンプルかつ分かりやすい売買の判定が容易にできるゴールデンクロスとデッドクロスに焦点を当ててみましょう。この分析手法では、計算対象の期間が異なる2本の移動平均線を利用して相場の反転を確認していきます。
移動平均線を見ていく上で見るポイントとしては、計算対象の期間が長くなるほど変動が緩やかになり、価格の変動に対して反応が鈍くなるという特徴が重要です。
2本の移動平均線のクロスは、この特徴を活用した分析手法で、長期間の平均値と短期間の平均値との方向や位置関係から今後の値動きを考察していきます。
売買シグナル
売買の判断を移動平均線から考察したものがあります。一定の条件を満たしたときに、買いと売りのタイミングを参考にすることができるため、シンプルかつ便利なものとなっています。
視覚的にわかりやすいパターンをいくつかみていきましょう。
ゴールデンクロス
ゴールデンクロスは、買いシグナルのひとつとされおり、短期の移動平均線が中期や長期の移動平均線を下から上に突き抜けるケースのことをいいます。
交差した移動平均線がともに上昇していれば、より強気なトレンドに転換したことを示唆しているので、買いの勢いが増しやすいとされているため。上昇の勢いが増す可能性が高くなります。
デッドクロス
デッドクロスは、上昇のあとに出る現象で、売りシグナルのひとつとされています。ゴールデンクロスとは逆に、これまで安心して買っていた人の価格を、短期間で割り込むことにより、下がりやすくなります。短期の移動平均線が、中期や長期の移動平均線を上から下に突き抜けるときのケースをそう呼びます。
交差した移動平均線がともに下降していれば、より弱気なトレンドに転換したことを示唆しているとされているため、このサインが出たときに株価が下方向に進む可能性が多いとされています。
サポートライン(支持線)
強い上昇が続いている場合、投資家の心理状態としては「できれば安いところで買いたい」と考えている方は多数いると考えられます。
そのような心理状態のなか、過去に5日移動平均線まで下げると、決まって上昇する動きが頻繁に見られていたとすると、5日移動平均線まで我慢し、この水準で買いに動く人が多くなる傾向があります。
結果的に、5日移動平均線が心理的な節目となることから、下値支持線として機能することもあります。
しかし、ひとたびサポートラインを割り込むと、大きく価格が下落する傾向にあります。
これは、サポートライン付近で買った投資家が一斉にポジションを反対売買するために売りが殺到しやすくなり、それまでの安値を更新したために、売りで参入する投資家が増えることから、俗に「ナイアガラ」と呼ばれる大暴落に繋がりやすくなるのです。
レジスタンスライン(抵抗線)
サポートラインとは逆に、その水準に達すると上昇が止まる効果を持った移動平均線をレジスタンスラインと言います。サポートラインとともに多くの市場参加者が注目するポイントとなっており、それまで買いポジションを持っていた投資家の利益確定の目安になります。
抵抗線として意識されていた移動平均線を価格が越えると、「視界良好」といった見方につながり、上げ幅を拡大する可能性があります。サポートラインと同じようにレジスタンスラインを突破して上昇を始めると、レジスタンスライン付近で売りで参入している投資家の一斉損切りや、買い遅れの投資家による、飛びつき買いが入りやすくなるために、価格が急上昇しやすくなります。
ダマシ
直感的にわかりやすいゴールデンクロスやデッドクロスですが、デメリットも当然存在します。ゴールデンクロスやデッドクロスを発見するために使われている移動平均線は、平均値をとる期間を短かくすればするほど、上下の動きが激しくなる傾向があるため、売買シグナルが多く発生してしまう特徴があります。
短い時間軸で考察することは短期売買において役立ちますが、相場のわずかな変動で頻繁にシグナルが変わってしまうダマシも多いことから、注意する必要があります。
一方、長期の移動平均線ではダマシの可能性は減りますが、シグナルが発生するまでにタイムラグが生じるので、トレンド転換のシグナルが現れるのが遅くなります。銘柄ごとのクセや過去の傾向から選別していく方法が無難といえます。
一般的には、株価上昇のサインとして使われているゴールデンクロスや、その逆のデッドクロスもすべてが絶対的なものではありませんので、これだけで判断するのは危険です。
グランビルの法則
移動平均線と株価の乖離(かいり)の仕方や方向性を見ることで、株価の先行きを判断する株式投資理論。米国のチャート分析家ジョゼフ・E・グランビル氏が考案した、テクニカル分析の一つです。
移動平均線が長期間下落、もしくは横ばいで推移した後に上昇に転じ、株価がその移動平均線を下から上へ突き抜けるときは買いなど、売りと買いで、それぞれ4通り、計8つの法則で成り立っています。
この法則を利用し、売買ポイントを考察しながら押しと引きを決めていくトレード手法です。状況に応じた買いと売りのパターンを確認していきましょう。
買いのパターン
・移動平均線が上向きになりつつ、株価が下から上に抜ける
・移動平均線が上昇中で、株価が上がって移動平均線を上回った後、再度下回る
・上昇中の移動平均線に向かって株価が下がり、移動平均線の手前で株価が上がる
・株価が移動平均線から大きく下に乖離
売りのパターン
・移動平均線が下向きになりつつ、株価が上から下に抜ける
・移動平均線が下降中で、株価が下がって移動平均線を下回った後、再度上回る
・下降中の移動平均線に向かって株価が上がって、移動平均線の手前で株価が下がる
・株価が上昇中の移動平均線から大きく上に乖離
まとめ
株価チャートの移動平均線から、売買タイミングを考察する方法について紹介しました。移動平均線のゴールデンクロスとデッドクロスはトレンドの転換を示しますが、それだけで判断してはいけません。
移動平均乖離率を見ることによって、株価の上げ過ぎや下げすぎを判断し、反発のタイミングを見図っていくことも大切です。また、グランビルの法則による8つの売買シグナルも有効活用しましょう。
売買のタイミングを見極めるまでには、大きな壁を感じることもあるでしょう。しかし、色々な指標と組み合わせることによって、精度が確実に上がっていくはずです。是非、今回紹介した記事をフルに活用して、良い結果を生み出しください。